前回までの記事は、こちら
前回までの記事では、
代表的な
【動物ー動物・動物ーヒト・ヒトーヒトに感染するコロナウィルス】
【コロナウィルスに打ち勝つ為の体内の免疫機構(自然免疫編)】
を書いていきました。
今回は番外編、臨床的な側面から検査結果で見る予測をしていきたいと思います。
あまり一般的に馴染みのない話になるかもしれませんが、申し訳ございません。
現段階で、F.TOMOCHIKAとしては、身バレをしたくないので、詳細は書けませんが、
F.TOMOCHIKAは、現在、獣医学生として、産業動物である大動物(牛・馬等)の内科ゼミに所属してます。
以前にも記事に書きましたが、大動物達は、主に産業動物であり、
産業動物とは、
産業動物(さんぎょうどうぶつ)、あるいは経済動物(けいざいどうぶつ)は、その飼育が、畜主の経済行為として行われる動物の総称。ただし呼び方としては、家畜・家禽(鶏のみを指す場合)の方がより一般的であり、これに対する名称及び存在が愛玩動物(ペット)である。
狭義には牛・豚・馬・ヒツジ・山羊・鶏・アヒル・ミツバチなど、その生産物や労働力が人間にとって有用なものとなる動物たちを指す。広義には前記のような動物の他、観賞用の錦鯉など人の手によって繁殖を管理され、その商取引によって市場が形成されている動物までを含むこともある。
なお、国の法令に「産業動物の飼養及び保管に関する基準」があり、ここでの定義は「産業等の利用に供するため、飼養し、又は保管しているほ乳類及び鳥類に属する動物をいう。」となっている。
Wikipediaより参照
Wikipediaさんの文章が長々しいので、簡単に書くと、私達の食事として、栄養としてとても重要な存在である動物たちという事です。
僕は、その自分たちの生活として欠かせない産業動物を内科的に治療もしくは研究していくゼミに所属していますが、
所属して分かった事は、この大学の産業動物ゼミに所属している学生の産業動物に対してのアニマルウェルフェアもしくは動物愛護の精神は低いなと感じる事が多いです。
(アニマルウェルフェア・動物愛護の記事はこちら → 「アニマルウェルフェアと動物愛護」に関しての考察)
その中でも臨床的な側面で書いた記事にもあるのですが(CBCから考える病気の可能性に関しての考察)、
産業動物のゼミには、提供で牛さんやお馬さんが来る事があります。
確かに、牧場主さんからしてみれば、市場に出せない死ぬのを待つのみの仔を自分の牧場に置いててもしょうがないので、
学校に提供してくださるというのはとてもありがたいなと思います。
ただ、こと学生にとっては、死ぬ間際の仔が来てもただその仔を亡くなったら解剖して、はいおしまい。。。
という感覚しかないなと近くにいて思う毎日です。(過激な動物愛護団体は卒倒するような話なのかもしれませんね)
僕自身が、アニマルウェルフェアよりも動物愛護的考えが強い人間なので、そもそもの提供というシステムには抵抗があるのですが、
末期できた仔の最後のメッセージをしっかりと読み取ろうという努力はしていきたいなと思う毎日です。
ではでは、本題に入りたいと思うのですが、
なぜ、今回、このコロナウィルスの記事において、この様な話を長々と始めにしたのかというと、
今回、提供で来た仔(2020/04/15没)がコロナウィルスで重症化した場合の臨床症状に似た点が多かったので、記事にしようと思いました。
今、この世の中で流行している、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、
免疫機能が弱まっている人間は、様々な症状をきたす可能性があります。
世間で言われている症状では、
初期症状では、鼻水や咳、発熱、軽い喉の痛み、筋肉痛や体のだるさ(倦怠感)など、
風邪のような症状が生じます。(俗に言うインフルエンザ様症状)
特に、37.5℃程度の発熱と強い体のだるさを訴える人が多いという特徴があるようです。
また、最近、野球選手が発現した事で世間に認知されてきた事として、
“においが分からない”“味が分からない”など、
嗅覚・味覚障害が起きる人もいることが分かっています。
この段階で、安静にして、栄養のある物を食べ、体力の回復に務める事で完治する方が多い事とは反して、
基礎疾患をお持ちの方は重症化を招くリスクもあります。
【基礎疾患とは、
基礎疾患とは、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD 等),透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方を指します。】
この重症化した場合の症状として、
肺炎を発症し、呼吸が苦しくなる、いわゆる呼吸困難の状態に陥ることが知られています。
では、肺炎とはなんなのか??
肺炎には、様々な原因があるとは思います、細菌性であったり、ウィルス性だったり、
今回はコロナウィルスなので、ウィルス性の肺炎ですが、
一般的にいう肺炎とは、
せき、発熱、胸痛、痰がでる、息苦しいなどで、かぜの症状もありますが、根本的に風邪と違うのは、
感染部位が違います。
風邪は主に鼻や喉といった上気道に原因微生物が感染して炎症を起こすのに対して、
肺炎は主に肺の中の感染症であり、肺胞という部位に炎症が起こります。
私達人間も含め、ほぼほぼ多くの恒温動物などは、
【呼吸】という行為は、自分の中の二酸化炭素を酸素と交換するという手段であり、
肺胞は、酸素を取り込み二酸化炭素を吐き出す「呼吸」を行っている唯一の部位だと認識してもらえれば分かりやすいと思います。
今回、僕の所属するゼミに提供できた仔は、
簡単な説明をすると、2019年11月生まれの女の子のホルスタインで、
末期の肺炎症状、2020/04/14に提供で運ばれ、2020/04/15呼吸困難にて息を引き取りました。
来た時点で、呼吸はしずらく、ゼーゼー音がひどく、聴診をしても肺音が大きすぎて心拍が測れませんでした。
今回、この末期症状にて、
肺炎にかかった場合、顕著に検査の面で、異常値があったのは、血液ガス値ではないかと思います。
血液ガス値とは、血液のph・炭酸ガス分圧(PCO2)・酸素分圧(P O2)を今回は主な着目点にした検査の値です。
動脈としては、耳動脈
静脈としては、頸静脈から採血をしました。
検査結果として、
血液ガス(動脈)
pH 7.36 PCO2 63mmg P O2 30mmg Na+ 131mmol/L K+ 4.4mmol/L Ca2+ 0.99mmol/L Glu 50mg/dL Lac 2.7mmol/L Hct 45% |
血液ガス(静脈)
pH 7.33 PCO2 68mmg P O2 17mmg Na+ 132mmol/L K+ 4.4mmol/L Ca2+ 0.98mmol/L Glu 42mg/dL Lac 2.7mmol/L Hct 44%
|
動物の血液ガスと人間の血液ガスの正常値はそう変化があるものではないので、人間の正常値を参考にするのがいいのかもしれませんが、
CBTの記事を書いた時にも文章にしたのですが(獣医学生だから言える、CBT・OSCEの必要性のなさ)、
獣医医療業界の参考書が本当に種類が無いのが問題で、
色々な方が過去に書いた論文のアーカイブ等を読み漁って、自分なりの正常値を自分なりの参考書にして勉強してます。
先程の、動脈血と静脈血をみて、値的に皆さんがどう感じましたでしょうか??
値がほぼ変わらなくないですか??
これ、動脈血と静脈血に値がほぼ変わらないなんておかしい話なんです。
動脈血と静脈血で相関性があってはいけないのは、主に2つ
炭酸ガス分圧(PCO2)・酸素分圧(P O2)
です。
動脈血とは、
肺胞によって二酸化炭素を酸素に交換した血液が全身循環する血液
静脈血とは、全身循環して色々な臓器に酸素を供給し、二酸化炭素を受け取り全身循環から肺に戻っていく血液
つまり、
動脈血は、酸素濃度が高く・二酸化炭素濃度は低く
静脈血は、二酸化炭素濃度が高く・酸素濃度が低い
はずです。(主な動脈血と静脈血の話です。)
今回の結果をみたら、
動脈血
PCO2 63mmg
P O2 30mmg
静脈血
PCO2 68mmg
P O2 17mmg
つまり、この結果より、肺に炎症がおきていて肺胞が十分な働きをしておらず、
酸素と二酸化炭素の交換がほぼほぼ出来ていないという事が分かると思います。
今回、僕が自分自身が参考に使っている正常値をご紹介
血液ガス(動脈血正常値:37℃に補正)
pH 7.49 PCO2 35.9mmg P O2 93.0mmg |
血液ガス(静脈血正常値:37℃に補正)
pH 7.40 PCO2 51.9mmg P O2 33.3mmg |
この正常値からも今回の肺炎の仔が明らかな酸素不足に陥っている事が分かりますね。
つまり、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、
重症化した場合の肺炎において、「必要なのは何のか??」
をよくマスメディアさんが言っていますが、ある意味、今回の記事がその証明になっていくのではないかと思います。
そう、重症化した場合に必要なもの、それは
人工呼吸器
です。
マスメディアさんは人工呼吸器・人工呼吸器と連呼してますが、なぜ人工呼吸器が必要なのか論じない。
それは肺炎になったら、自ら肺胞の力で、二酸化炭素を酸素に交換する能力が衰えているため、
機械に助けてもらっているという意味です。
人工呼吸に頼らざるをえない状況にならないよう、自分たちの身体の免疫力が維持していきたいものです。