獣医学生のつぶやき

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その3

前回の続きです。

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その1

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その2

 

 

前回までの記事では、

 

代表的な【ヒトに感染するコロナウィルス】【動物ー動物・動物ーヒト・ヒトーヒトに感染するコロナウィルス】に関して書きました。

 

 

 

 

今日は、皆さんのご家族であるペット達、そして酪農家さん達の大切な家畜達にかかる可能性のある、

 

【固有の動物に感染するコロナウィルス】

 

に関して記事に出来ればと思います。

 

まず、始めに表(一部をピックアップ)にしときます。

属・種 自然宿主 主な病気
アルファコロナウィルス属

・猫伝染性腹膜炎ウィルス

・犬コロナウィルス

・豚伝染性胃腸炎ウィルス

・豚流行性下痢ウィルス

 

 

腹膜炎

胃腸炎

胃腸炎

下痢

ベータコロナウィルス属

・牛コロナウィルス

・マウス肝炎ウィルス

 

マウス

 

下痢

脳炎・肝炎

ガンマコロナウィルス属

・鶏伝染性気管支炎ウィルス

 

気管支炎

 

 

 

今回は、獣医学生らしい動物の病気の紹介ですね。

 

その3では、伴侶動物の猫と犬の病気に関して紹介します。

 

 

 

 

 

・アルファコロナウィルス属

猫伝染性腹膜炎

僕の中では、猫では重症の病気というイメージです。

 

猫のコロナウィルス病には、まず猫腸内コロナウィルス感染症があります。

 

猫腸内コロナウィルス感染症(Feline enteric coronavirus:FECV)は、日本の猫の多くに感染しており、抗体陽性の猫はとても多く、病原性は弱いです。

 

この猫腸内コロナウィルス(FECV)が、猫の体内で突然変異を起こした強毒型が、

 

猫伝染性腹膜炎】です。

 

猫伝染性腹膜炎の病型として、”ウェットタイプ” と ”ドライタイプ” の2つに分かれます。

 

・”ウェットタイプ”は、言い換えれば、滲出型であり、

 

発熱・下痢・貧血・腹水および胸水の貯留・呼吸困難が見られます。

 

・”ドライタイプ” は、言い換えれば、非滲出型であり、

 

腹部にしこりができ、脳内に炎症を起こし、麻痺や痙攣などの神経症状を呈します。

 

 

○治療法は??・・・ワクチンはない。対症療法で治療していくしかない。

対症療法として、ステロイドなどで炎症を抑え、インターフェロンで免疫力をあげる等を選択するが、

延命治療でしかなく、根治させることは出来ない。

 

 

○かかりやすい猫の種類は

① 3歳ぐらいまでの若い猫

② ストレスをかかえてくらしている猫

③ 多頭飼い

④ 純血種の猫

 

 

 

 

 

 

 

・アルファコロナウィルス属

犬コロナウィルス病

犬コロナウィルス(Canine coronavirus)は、嘔吐と下痢を主徴とする胃腸炎を起こします。

 

下痢はオレンジ便になり、幼犬では重篤になることが多い。

 

成犬では、不顕性感染(注:不顕性感染とは、感染が成立していながら臨床的に確認しうる症状を示さない状態の事をさします。)が一般的で、

 

下痢・食欲低下・嘔吐を起こしたとしても軽症です。

 

感染力はとても強く、嘔吐物や下痢便から経口感染するので、

 

お散歩中などの他のワンちゃんのうんち等は要注意です。

 

 

○治療法は??・・・ワクチンがあります。

犬のワクチンには、基本的に5種と8種があります。

 

5種混合ワクチンは、

・犬ジステンバー

・犬アデノウィルス2型感染症

・犬伝染性肝炎

・犬パラインフルエンザウィルス感染症

・犬パルボウィルス感染症

 

 

8種混合ワクチンは、

・犬ジステンバー

・犬アデノウィルス2型感染症

・犬伝染性肝炎

・犬パラインフルエンザウィルス感染症

・犬パルボウィルス感染症

・犬レプトスピラ症

犬コロナウィルス病

 

 

8種混合ワクチンに犬コロナウィルスが入ってます。

 

世間の獣医さんは、山などに遊びにいくワンちゃんに打てばいいと言うかもしれませんが、

 

是非とも、おうちにいる大切なワンちゃんには、8種混合ワクチン打ってあげてください。