獣医学生のつぶやき

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その4

前回の続きです。

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その1

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その2

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その3

 

 

前回までの記事では、

 

代表的な【ヒトに感染するコロナウィルス】【動物ー動物・動物ーヒト・ヒトーヒトに感染するコロナウィルス】 【固有の動物に感染するコロナウィルス 犬・猫編】に関して書きました。

 

 

 

 

今日は、酪農家さん達の大切な家畜達にかかる可能性のある、

 

【固有の動物に感染するコロナウィルス 家畜編】

 

に関して記事に出来ればと思います。

 

前回も紹介しましたが、始めに表(一部をピックアップ)にしときます。

属・種 自然宿主 主な病気
アルファコロナウィルス属

・猫伝染性腹膜炎ウィルス

・犬コロナウィルス

・豚伝染性胃腸炎ウィルス

・豚流行性下痢ウィルス

 

 

腹膜炎

胃腸炎

胃腸炎

下痢

ベータコロナウィルス属

・牛コロナウィルス

・マウス肝炎ウィルス

 

マウス

 

下痢

脳炎・肝炎

ガンマコロナウィルス属

・鶏伝染性気管支炎ウィルス

 

気管支炎

 

 

 

今回のその4では、家畜編として、家畜(牛・豚・鶏)にかかるコロナウィルスを紹介出来ればいいなと思います。

(おまけで、実験動物のマウスも←おまけと書いてしまうとマウスにかかるコロナウィルスは重い感染症では無いと思われるかもしれませんが、結構ヘビーな感染症です。)

 

家畜のコロナウィルスも重要な感染症で、長い年月、人間の食べ物として大事に扱われてきた家畜達にとって、

 

コロナウィルスは確かな天敵であったことから、多くのコロナウィルスの感染症にはワクチンがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、家畜の動物種別のコロナウィルス感染症を紹介する前に、一つ紹介出来ればいいなと思う事があります。

 

皆さんは、【家畜伝染病予防法】という言葉を聞いた事がありますか??

 

この【家畜伝染病予防法】とは、

 

(目的)として、家畜の伝染性疾病の発生・蔓延を予防し、畜産の新興を図る為に定義つけられた法であり、

 

この法には伝染性疾病がいくつも指定されています。

 

わかりやすく言えば、ある酪農家さんの牧場で、この指定された疾病に家畜1頭が感染した場合、

 

そこからどんどん他の家畜に波及して、その酪農家さんの家畜を全部殺処分しなくちゃいけないレベルの感染症なのです。

 

その中でも、重篤度別に、

 

(定義)①家畜伝染病(法定伝染病)28疾病

    ②届出伝染病       71疾病

 

2つに分けて指定してます。(重篤度別といいましたが、届出伝染病も感染した家畜は殺処分しなくちゃいけないレベルに間違いはありません。)

 

 

2つをまとめて「監視伝染病」として、対象となる動物感染症を指定しています。

 

 

一部を紹介すると、届出伝染病も71種は流石に多いので、僕も今の段階では覚えていない物が多いですが、

 

法定伝染病は、それこそCBTで間違いなく覚えてないと解けない問題もあるので、ご紹介を。

 

法定伝染病(28疾病):

牛疫・牛肺疫・口蹄疫・流行性脳炎・狂犬病・水疱性口炎・リフトバレー熱・炭疽

出血性敗血症・ブルセラ病・結核病・ヨーネ病・ピロプラズマ病・アナプラズマ病

伝達性海綿状脳症・鼻疽・馬伝染性貧血・アフリカ馬疫・小反芻獣疫・CSF(豚熱)

ASF(アフリカ豚熱)・豚水疱病・家きんコレラ・高病原性鳥インフルエンザ・

低病原性鳥インフルエンザ・ニューカッスル病・家きんサルモネラ感染症・腐蛆病

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではでは、長々と前置きを書いてしまいましたが、

 

早速、家畜にかかるコロナウィルス感染症を動物種別にご紹介していきます。

 

 

 

】感染症名:牛コロナウィルス病

ウィルス

ニドウィルス目コロナウィルス科コロナウィルス亜科ベータコロナウィルス属牛コロナウィルス

 

 

世界各国で発生が認められ、日本においても成牛の抗体陽性率は高い。(つまり若い間に感染した事がある可能性が多いにある。)

 

 

 

症状:突発性の下痢が主徴。暗緑色ないし黒色の水様下痢が特徴で、粘血便を示す事もある。

乳牛では泌乳量の低下がおきる。

 

 

感染環:下痢便による経口感染が主だが、牛コロナウィルスは呼吸器にも感染し、軽度の呼吸器症状も示すので、

鼻汁などのよる飛沫感染もある。

 

 

診断:RT-PCRによる遺伝子検出

 

 

治療および・予防:治療は対症療法で。予防は、牛下痢混合不活化ワクチンがある。

 

ちなみに、F.TOMOCHIKAは大学で、産業動物である大動物の牛の内科的疾患を研究するゼミに所属しておりますが、まだ牛コロナウィルス病に遭遇した事はありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


】感染症名:豚伝染性胃腸炎

ウィルス

ニドウィルス目コロナウィルス科コロナウィルス亜科アルファコロナウィルス属豚伝染性胃腸炎ウィルス

 

 

冬季に流行し、爆発的な流行になることが多い。

 

 

症状:嘔吐と水様性下痢・脱水を主症状とする急性症状を示します。

潜伏期は1〜3日。

哺乳豚の致死率は100%だが、成長するに伴い症状は軽度になる。

 

 

区分:届出伝染病

 

 

治療および予防:治療は対症療法で。予防はワクチンがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

】感染症名:豚流行性下痢

ウィルス

ニドウィルス目コロナウィルス科コロナウィルス亜科アルファコロナウィルス属豚流行性下痢ウィルス

 

 

季節に関係なく発症する。

 

 

症状:食欲不振に続く水様性下痢が主徴であり、10日齢以下の哺乳豚では脱水によりほぼ100%の致死率。

 

加齢とともに致死率は下がる。

 

 

区分:届出伝染病

 

 

検査および診断:ウィルス分離、抗原検出、抗体検査

 

 

治療および予防:治療は対症療法で。予防はワクチンがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

】感染症名:鶏伝染性気管支炎

ウィルス

ニドウィルス目コロナウィルス科コロナウィルス亜科ガンマコロナウィルス属鶏伝染性気管支炎ウィルス

 

 

世界中で発生が認められ、鼻汁や糞便に大量のウィルスが含まれており、空気感染を起こします。

伝播力はとても高いです。

 

 

症状:主に急性の呼吸器疾患だが、産卵率の低下や異常卵、生殖器や腎臓の障害も認められる。

 

 

区分:届出伝染病

 

 

検査および診断:

  • (1)蛍光抗体法:気管の凍結切片から特異抗原を検出する。
  • (2)ウイルス分離:気管・腎を材料とした発育鶏卵に数代にわたり継代する。
  • (3)PCR検査
  • (4)血清学的検査:ELISA、寒天ゲル内沈降反応、中和試験

 

 

治療および予防:ワクチンがある。

 

 

 

 

 

 

 


マウス】感染症名:マウス肝炎

ウィルス

ニドウィルス目コロナウィルス科コロナウィルス亜科ベータコロナウィルス属マウス肝炎ウィルス

 

 

動物実験施設において重要な大きな問題となるウィルスで、自然宿主はマウスだがラットにも感染する。

 

ちなみに、

マウスとラットの違いは、

 

マウスの体長は5~10cm体重は16~28gと、本当に手のひらに乗るくらいの小さいネズミです。

ラットの体長は18~28cm体重は200~700gと、マウスの2倍以上の大きさがあります。

 

また、

マウスは尿臭が強く、ラットは尿臭がないという特徴があります。

飼育環境においてもマウスは、もともと穀物倉庫や、草地、畑に住んでいたハツカネズミであったことから、乾燥には強く湿気に弱いという特徴があります。

しかし、ラットはもともと下水や、沼地、河川に住んでいたドブネズミなので、湿気に強く、乾燥に弱いという特徴があります。

 

 

経口・経鼻感染で感染し、施設全体に容易に広まっていきます。

 

施設に広まってしまった場合は、ウィルス排除は不可能らしく、全てのラット・マウスを殺処分し、

 

施設を消毒するしか方法がなく、実験動物学においては最も重要な感染症です。

 

 

 

 

 

 

次回は、コロナウィルスのニュースでやっている、診断法のPCRに関して記事に出来ればいいなと思います。