獣医学生のつぶやき

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その5

前回の続きです。

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その1

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その2

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その3

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その4

 

 

 

前回までの記事では、

 

代表的な

【ヒトに感染するコロナウィルス】

 

【動物ー動物・動物ーヒト・ヒトーヒトに感染するコロナウィルス】

 

【固有の動物に感染するコロナウィルス 犬・猫編】

 

【固有の動物に感染するコロナウィルス 家畜編】に関して書きました。

 

 

 

 

 

昨今のこのコロナウィルス騒動で、今の世の中がとても混乱状態にあります。

 

一人一人が誤った行動を取らないよう、

 

皆で知識を共有し、正しい情報を持って慎重な行動を取っていこうという意味もこめて、

 

このブログも少なからず何かの助けになるのではないかと思い、発信していってます。

 

特に、テレビや雑誌等、マスメディアでもよく言われている、

 

3密

 

【3密】とは、

1:換気の悪い閉空間

2:多数が集まる集空間

3:間近で会話や発生をする接場面

 

この3つを合わせて3密となります。

 

 

 

 

僕の大学も、やっとこさ昨日(2020/04/09)、

 

学校が始まる前期の日程が延長する事になりましたが、

 

獣医学部となれば、病院業務もあり、では、病院業務も担っているゼミはどうなってるのか??

 

といえば、まだまだ密なんじゃないのかな。。。とも思ったりします。

 

 

僕は自分自身が、【クラスター(注)】にならないよう、3密を強いられるゼミにおいても自主休校をし、自宅学習に勤しんでいる毎日です。

【クラスターとは??・・・疫学におけるクラスターは、時間的および地理的の両方の観点で、近接して発生する特定の疾患または障害が異常に高い発生率である集団 。】

 

 

最近は、この自宅学習中に、全然勉強してこなかったジャンルを色々調べていくと、とても面白く、

 

あー今まで、単位を取る為だった学習が、興味がある分野に出会えるとまた違う側面が見えるよね

 

ってつくづく思っている毎日です。

 

 

 

その中で、この、今、世の中を困難の渦に陥れているコロナウィルスを獣医学生視点で学習している流れも相まって、

 

発展して勉強している事を今回は記事にしようと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

【ヒトに感染するコロナウィルス】の時にも書きましたが、

 

まず、ヒトに感染するコロナウィルスをおさらいさせてください。

 

 

 

 

ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルスは、

 

ヒトコロナウィルス229E株、ヒトコロナウィルスOC43株、ヒトコロナウィルスNL63株、ヒトコロナウィルスHKU1株があります。

 

風邪の10~15%(流行期35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因となり、冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子供は6歳までに感染を経験します。

 

1960年代にヒトコロナウィルス-229E株と、ヒトコロナウィルスOC43株が発見され、

 

2000年代に、ヒトコロナウィルスNL63株とヒトコロナウィルス-HKU1株が新たに発見されました。

 

また、229E株とNL63株は、アルファコロナウィルス属に分類され、

 

OC43株とHKU1株は、ベータコロナウィルス属に分類されます。

 

 

【症状は??】

○アルファコロナウィルス属

・ヒトコロナウィルス-229E株・・・上気道炎(鼻炎・咽頭炎)

・ヒトコロナウィルスNL63株・・・ 下気道炎(細気管支炎・肺炎)

 

 

○ベータコロナウィルス属

・ヒトコロナウィルスOC43株・・・上気道炎

・ヒトコロナウィルス-HKU1株・・・下気道炎

 

 

 

以下に詳しい説明

・1960年代に発見された、ヒトコロナウィルス-229E株と、ヒトコロナウィルスOC43株は、風邪の原因ウィルスとしては、重要であり一般的である。

 

2〜4日の潜伏期の後、鼻汁過多・鼻閉・くしゃみ・咽頭痛などの上部気道炎を呈します。

 

平熱の場合が多いが、約20%の症例で、37℃〜38℃の発熱がある。

 

数日で回復するも、獲得免疫は弱く、再発する可能性が高い。

 

 

・2000年代に発見された、ヒトコロナウィルスNL63株とヒトコロナウィルス-HKU1株は、

 

1960年代に発見された、ヒトコロナウィルス-229E株と、ヒトコロナウィルスOC43株よりも病原性が強い。

 

 

 

 

【治療法は??】

特異的な抗ウィルス薬はない。

呼吸困難・発熱・下痢などに対する対症療法がメイン

 

 

 

 

 

 

 

 

なるほど、なるほど。

 

風邪として一般的なコロナウィルスさえも抗ウィルス薬はないのです。

 

 

 

 

 

 

 

次に、動物からヒトそして、ヒトからヒトにと感染していくコロナウィルスではどうでしょうか??

 

コロナウィルスを獣医学生視点で考える その2 に書きました、

 

SARSおよびMERSも、有効な治療法はなく対症療法のみで治していくしかないようです。

 

 

 

 

 

 

今回の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)が、どこを起源に発生しているかは分かりませんが、

 

既存のウィルスの変異なのか、動物固有だった物を、どこぞの大陸人がその動物を食してそれが体内で、再構築されたのか等、

 

色々な可能性はあるにはありますが、

 

何にしろ抗ウィルス薬(特効薬)は存在しないという事になります。

 

 

ただし、・コロナウィルスを獣医学生視点で考える その3 にも書いてますが、

 

ワクチンを作る事は、この新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)でも可能かもしれません。

 

 

 

 

ここで、ワクチンと特効薬の違いはなんなのか??

 

という事に疑問をお持ちではないでしょうか??

 

ワクチンを予防薬、特効薬を治療薬という言葉に置き換えると、

 

予防薬は、まだ病気になっていない人が病気に罹らないように、あるいは、罹ったとしても軽くすむように、事前に使う薬だといえるでしょう。

 

それに対して、

 

治療薬はすでに病気に罹った人が使って、病気を治す、あるいは症状、病態を緩和し、悪化を抑える薬だと言えるでしょう。

 

 

つまり、ワクチンが出来たとしても、それは、現在、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)に罹患していない人間にとって有効である。

 

という事になります。

 

 

 

 

 

ここで、問題になるのが、「ではワクチンはいつ出来るのか??」

 

という事ではないでしょうか。

 

ワクチンを認可し、そしてそのワクチンが世の中に出回る為には、何段階もの行程が必要となります。

 

 

今回はその点に関して文章にすると長くなってしまうので、一部を紹介すると、

 

例えば「疫学」分野で考えてみると、

 

【介入研究】というのがあります。

 

【介入研究】とは、疾病や問題発生の予防、人や動物の健康状態等の改善を目的とし、

 

目的に基づいて研究対象群を決め、対照群の一部に医療や公衆衛生上の介入を行い、その介入と疾病のまたは問題発生の関係を分析し、臨床試験等につなげていきます。

 

いくら頑張っても、そのワクチンが人体に他の悪影響があってはいけないので、

 

そうならないような膨大なデータを得たうえでしか世の中に出回る事はないという事です。

 

それが1年なのか2年なのかは分かりませんが、そのワクチンが出来るまで私生活で行動がとれないでは問題なわけです。

 

 

 

そうなると、どうしたらいいのか??

 

といえば、そうそれは、もう「予防」しかないんですよね。

 

この「予防」に関しては、マスメディアでいくつも紹介されているので今回は多くを語りませんが、

 

手洗い・うがいの必要性は高いでしょう。

 

 

 

 

話を長々と書いてしまいましたが(この時点で3000文字あります(^_^;))、

 

ここからが僕が書きたかった本題になります。

 

 

予防をしても罹るものは罹る!!

 

という事です。

 

3密を気にしても、人と接しない事は基本的に無理。

 

無理なら、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)に既に自分が罹患してるもしくは罹患する可能性は多いにあると考え、

 

いかに、自分の身体でCOVID-19に打ち勝つかという事を考えるべきなのではないかなと思います。

 

 

 

ここで、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)に罹患し、症状が出た場合の、対症療法を書きたいところですが、

 

それは次回の記事とし、今日は、ウィルスを防御する身体の中にある機構を書きたいと思います。

 

 

 

ウィルスを防御する機構は、自然免疫獲得免疫の2つが存在します。

 

 

 

 

自然免疫とは、

①皮膚・粘膜による機械的バリアー(侵入を防ぐ)

②腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)による生物学的バリアー

③好中球・マクロファージ・樹上細胞等の食細胞による貪食・殺菌機構

④好酸球・好塩球による細胞障害因子放出

 

大別してこの4つだと思います。

この4つのうち、④は主に寄生虫に関わる話なので、今回のウィルスとあまり関係ないので除外。

 

①は、くしゃみや喉の気管にある線毛の線毛運動によるウィルスや細菌を機械的に追い出す

②も同じような話

 

それでは今回、大事なのは、③だと思います。

 

では、好中球・マクロファージとはなんなのか??

 

まず、私達の身体は、固形成分(蛋白質・脂肪・無機物質)が約40%・液体成分が約60%にて構成されています。

 

この液体成分は、さらに細胞内液と細胞外液に分ける事が出来ます。

 

この細胞外液に血液(正確には血液中の血漿だが今回は血液と表現)が含まれます。

出典:救急救命士学習塾

 

 

この血液は、血漿(けっしょう)成分と血球成分に分ける事が出来ます。

 

血液全体の構成を100としたら、血漿成分が約55・血球成分が約45に分ける事が出来る。

 

 

この血球成分は、

 

赤血球・白血球・血小板の3つに大別する事が出来ます。

 

この赤血球・白血球・血小板の中で、自然免疫に関わるのが白血球です。

 

 

 

先程の話に戻りますが、

 

自然免疫とは、

①皮膚・粘膜による機械的バリアー(侵入を防ぐ)

②腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)による生物学的バリアー

③好中球・マクロファージ・樹上細胞等の食細胞による貪食・殺菌機構

④好酸球・好塩球による細胞障害因子放出

 

大別してこの4つのうち、

 

③は、白血球の話だという事です。

 

この白血球は、5つに分ける事が出来ます。

 

①好中球

②リンパ球

③単球

④好酸球

⑤好塩基球

 

この中で、好中球は、自然免疫の代表であり、体内に侵入したウィルスや細菌などの病原体や異物を見つけると、

 

血液中の好中球は、血管外に出て(この事を遊走といいます)、病原体や異物を食べて(この事を貪食といいます)死滅させます。

 

また単球も免疫系に関わり、好中球よりも数は圧倒的に少なけれど、サイズが白血球の中で一番大きく、

 

貪食能力も好中球の何倍もあります。

 

この単球は、抹消の血管に到達すると、マクロファージ・樹状細胞に分化し、病原体を食べて(貪食)、死滅させます。

 

 

文章が長くなってきたので、次回は獲得免疫に関して書いていきます。