今日は、
「CBC(血液検査)から考える病気の可能性に関しての考察」
について書いていこうと思います。
その前に前置きですが、この前、記事で書きました、
アニマルウェルフェアと動物愛護に関して自分の考えを書かせてもらいました。
というのも、なぜアニマルウェルフェアと動物愛護に関して色々自分なりに調べたかというと、
僕自身が、産業動物のゼミに所属して思うことは、
ゼミの人間の発言や、症例報告などを聞く機会があるたびに、
学生たちの、
「予後不良」と推測される故に病理解剖が望ましい
という発言が多すぎる、また、産業動物に対しての発言がひどすぎると思った故です。
先生たちの、動物に対する考え方(全員の考え方は知りませんが)と生徒の動物たちの考え方の乖離が甚だしいと思い、
自分は学生としてそうあってはいけないと思いました。
これは一例でしかないのですが、ひどいなと思った症例報告を紹介します。
「跛行が主訴で子牛が提供された。 来院日:左後肢に腫脹を確認。第2病日:線撮影・エコー検査とともに関節洗浄をし、関節液を採取し、生化学検査(白血球数の顕著な増加を確認)および好気培養をしたが原因が分からず、抗生物質を投与し、経過を観察。 第3病日〜第6病日:跛行は改善したが腫脹は変わらず 第7病日:再び関節洗浄 第8病日〜第15病日:経過が改善する気配がない 第16病日:関節切開術を行った 第17病日〜第31病日:改善は観られない 第32病日:予後不良と判断し病理解剖 病理解剖の結果:肺炎を確認でき、マイコプラズマ性の感染症と判断 |
うーーーーーーーん、なんてひどい。。。。
可哀想過ぎて、症例報告会聞きながら冗談だろ??
って思ってしまいました。
まず、第2病日から問題だと思います。
なぜ嫌気培養までしなかったのか??そしてなぜ血液検査もしなかったのか??
ここで、マイコプラズマだと断定する事が出来たら、まだ救える方法があったのではないか??
第17病日〜第31病日までなぜ抗生物質投与のみで経過を観察するのみだったのか??
もう謎だらけだったのですが、周りの雰囲気は良い発表だな〜みたいな雰囲気なんですよね。。。
僕の一番好きな先生だけが、質問で、なぜ第2病日に他の検査をしなかったのか??
と質問されたのですが、
回答が、この症例をした担当医が答えたのが「予後不良だと観て分かったので、詳しく検査はしなかった」
でした。
いやーこんな感じの精神が蔓延ってる環境でやっていけるのか本当に不安です。
という経験をしたので、
まだ自分は4年生で、ゼミに多くは関われてないのですが、
5年生になった時に、提供で牛さんが来た時には、
自分がCBC(血液検査)をした時に、色々な可能性を把握出来たらいいなと思い、
血液検査の項目を作ってみました。
使えるかわかりませんが、よかったら使ってください。
また、自分の尊敬する先生にこのリストを見てもらい、どんどん改善していくので、改訂版を作っていければいいなと思います。
生化学 血液検査 項目 生産動物:牛
【白血球数:WBC】 ○基準値:3500〜9700 (/μL) ○基準値以上:白血球増加症 ○基準値以下:白血球減少症 【好中球:Neutro】⚠牛では、好中球<リンパ球 ○基準値:42.0〜74.0(%) ○基準値以上で疑われる疾患:・生理的、エピネフリン誘発性→恐怖
・ストレス、糖質コルチコイド誘発性 →・糖質コルチコイドの投与 ・副腎皮質機能亢進症(牛では卵胞嚢腫??)
・炎症→感染??外傷??免疫介在性??腫瘍?? ・細菌性の肺炎 ・第4胃潰瘍 ・肝膿瘍 ・胆石症 ・細菌性心内膜炎 ○基準値以下で疑われる疾患:・白血病
・骨髄異形成症候群 ・再生不良性貧血 →高エストロジェン血症 →セルトリ細胞腫 ・骨髄繊維症 ・感染症:パルボウィルス(骨髄での産生の減少) ・ウィルス性の肺炎
【好酸球:Eosino】 ○基準値:0〜7.0(%)
○基準値以上で疑われる疾患:・寄生虫感染
・アレルギー疾患
・好酸球浸潤性疾患 →・好酸球性肉芽腫
・腫瘍 →・肥満細胞腫
・肝蛭症
○基準値以下で疑われる疾患:・副腎皮質機能低下症(牛では卵胞嚢腫で報告あり)
【リンパ球:Lympho】⚠牛では、好中球<リンパ球 ○基準値:18.0〜50.0(%)
○基準値以上で疑われる疾患 リンパ球増加症 →・エピネフリン誘発性
・エールリヒア症(牛でも??)
・ワクチン接種後
・副腎皮質機能低下症
・腫瘍 →・リンパ腫 ・急性リンパ芽急性白血病 ・慢性リンパ球性白血病 ・胸腺腫
○基準値以下で疑われる疾患 リンパ球減少症 →・ストレス/コルチコイド誘発性
・リンパ球喪失性疾患→・乳び胸 ・リンパ管拡張症 ・副腎皮質機能低下症(牛では卵胞嚢腫で報告あり)
・細菌性肺炎(好中球増加に伴い、相対的に減少)
【単球:Mono】 ○基準値:1.0〜8.0(%)
○基準値以上で疑われる疾患 単球増加症 → ・肉芽腫(細菌性・真菌感染)
・ストレス/コルチコイド誘発性
・副腎皮質機能亢進症(牛では卵胞嚢腫で報告あり)
【赤血球数:RBC】 ○基準値:・♂:438〜577 ・♀:376〜516 (×104/μL)
○基準値以下で疑われる疾患 : ・貧血(再生性貧血??非再生性貧血??) →貧血になる疾患の可能性 ・リンパ腫でも見られる可能性がある。 (鉄欠乏・免疫介在性疾患の併発から)
・腎前性腎不全
・腎毒性薬物(サルファ剤・アミノグリコシド系) →尿細管障害 →エリスロポエチン産生出来ない
○基準値以上で疑われる疾患 : ・相対的赤血球増加症⇒・脱水 ・下痢
: ・絶対的赤血球増加症⇒ ・一次性:真性赤血球増多症
・二次性:・低酸素 →慢性呼吸器疾患 ・エリスロポエチン産生腫瘍 →腎腫瘍
【ヘモグロビン濃度】 基準値:(g/dL) 基準値以下で疑われる疾患:貧血(再生性貧血??非再生性貧血??)
【ヘマトクリット:Ht】 ⇒赤血球の容積 / 総血液量×100 ○意味 :血液全体に占める赤血球の容積
○基準値:・♂:40.4〜51.9 ・♀:34.3〜45.2 (%)
○基準値以下で疑われる疾患:・貧血(再生性貧血??非再生性貧血??)
・第4胃潰瘍(Ht:15%以下)
【MCV:平均赤血球容積】 ⇒[ヘマトクリット(%)/赤血球数(106/uL)]×10 ○意味 :赤血球一個の大きさ
○基準値:・♂:83〜101 ・♀:80〜101 (fL)
○基準値以下で疑われる疾患 : ・小球性低色素性貧血(MCHも低下) →鉄欠乏??銅欠乏??
【MCH:平均赤血球ヘモグロビン量】 ⇒[ヘモグロビン濃度(g/dL)/赤血球数(106/uL)]×10 ○意味 :赤血球一個あたりのヘモグロビン量
○基準値:・♂:28.2〜34.7 ・♀:26.4〜34.3 (pg)
○基準値以上で疑われる疾患 : ・大球性貧血 →葉酸欠乏症?? ビタミンB12欠乏症??
【MCHC:平均赤血球ヘモグロビン濃度】 ⇒[ヘモグロビン濃度(g/dL)/ヘマトクリット(%)]×100 ○意味 :赤血球一個あたりのヘモグロビン濃度 ○基準値:・♂:31.8〜36.4 ・♀:31.3〜36.1(%) ○基準値以下:低色素性
【血小板】 ○基準値:14.0〜37.9(×104/μL)
○基準値以下で見られる疾患 血小板減少症 → ・骨髄疾患(薬剤・腫瘍・感染)
・免疫介在性血小板減少症(IMTP)
・ダニ媒介性疾患
・播種性血管内凝固(DIC)
・出血
【総蛋白:TP】 ○基準値:6.5〜8.2 (g/dL)
○基準値以上で疑われる疾患 : ・肝膿瘍
【A/G 比】 ○基準値:1.30〜2.00
○基準値以下で疑われる疾患 : ・肝膿瘍(グロブリン増加に伴って)
・肝蛭症
【アルブミン:Alb】 ○基準値:3.7〜5.5(g/dL)
○基準値以下で疑われる疾患 低アルブミン血症 → ・多発性骨髄腫
・副腎皮質機能低下症(原因不明)
・低カルシウム血症
・肝膿瘍
【蛋白分画(TP-F)】 ・A/G比 ・アルブミン:60.8〜71.8(%)
・アルファ1:基準値 ・1.7 〜2.9 (%) ・283±82
役割:炎症・腫瘍マーカー
・アルファ2:5.7 〜9.5 (%) ・ベータ :7.2 〜11.1 (%) ・ガンマ :10.21 〜20.4 (%)
【総ビリルビン】 ○基準値:0.3〜1.2(mg/dL)
○基準値以上で疑われる疾患 : ・脂肪肝 ・肝線維症 ・胆石症 ・胆管炎(抱合型ビニルビン)
【AST:GOT】 ○基準値:10〜40(U/L)
○心筋や骨格筋、肝臓の逸脱酵素
○基準値以上で疑われる疾患 : ・甲状腺機能低下症(ALT・ALPも上昇する)
・甲状腺機能亢進症(ALP・ALTも上昇する)
・ダウナー症候群(CK・LDHも上昇)
・大脳皮質壊死症(GGT・LDHも上昇)
・肝炎(GGTも上昇)
・脂肪肝(GGTも上昇)
・肝膿瘍(GGTも上昇)
・肝蛭症(GGTも上昇)
・胆管炎(GGTも上昇)
【ALT:GPT】 ○基準値:5〜45(U/L)
○肝臓の逸脱酵素
○基準値以上で疑われる疾患 : ・甲状腺機能低下症(AST・ALPも上昇する)
・甲状腺機能亢進症(AST・ALPも上昇する) →特に、ALTに注目
【γ-GT:γ-GLPもしくGGT(γ-グルタミルトランスフェラーゼ)】 ○基準値:・♂:79以下 ・♀:48以下
○肝臓・胆嚢等の逸脱酵素
○基準値以上で疑われる疾患 : ・肝炎(ASTも上昇)
・脂肪肝(ASTも上昇)
・肝膿瘍(ASTも上昇)
・肝繊維症
・肝蛭症(ASTも上昇)
・胆管炎(GGTも上昇)
【ALP】 ○基準値:104〜338(U/L)
○肝臓、胆管、骨、小腸、胎盤の逸脱酵素
○基準値以上で疑われる疾患 : ・甲状腺機能低下症(ALT・ASTも上昇する)
・甲状腺機能亢進症(ALT・ASTも上昇する)
・くる病(血中P濃度も低下)
【LD:LDH(乳酸脱水素酵素)】 ○基準値:120〜245(U/L)
○基準値以上で疑われる疾患 : ・ダウナー症候群(AST・LDHも上昇)
・大脳皮質壊死症(GOT・GGTも上昇)
【CK:CPK(クレアチンキナーゼ)】 ○基準値:・♂:50〜230 ・♀:50〜210
○筋肉の障害で出る酵素
○基準値以上で疑われる疾患 : ・ダウナー症候群(AST・LDHも上昇)
【アミラーゼ】 基準値:39〜134(U/L)
【総コレステロール】 ○基準値:150〜219(mg/dL)
○基準値以上で疑われる疾患 高コレステロール血症 → 甲状腺機能低下症(脂肪代謝の減退が原因)
【尿素窒素:UN・BUN】 ○基準値:8.0〜20.0
○基準値以上で疑われる疾患:・腎障害 ・腫瘍融解症候群→腎障害 ・甲状腺機能亢進症→腎障害(クレアチンも上昇する)
【クレアチン】 ○基準値:・♂:0.65〜1.09 ・♀:0.46〜0.82
○基準値以上で疑われる疾患:・腎障害 ・腫瘍融解症候群→腎障害 ・甲状腺機能亢進症→腎障害(BUNも上昇する)
【カルシウム:Ca】 ○基準値:8.6〜10.2 ○基準値以上で疑われる疾患 高カルシウム血症 → ・腫瘍随伴症候群 →上皮小体の腺腫(原発性上皮小体機能亢進症) →低リン血症も伴う ・パラソルモン関連蛋白による症状
・T細胞性リンパ腫(低リン血症も伴う)
・骨融解 → 多発性骨髄腫(低リン血症も伴う)
・腎不全
・副腎皮質機能低下症(アジソン病)
・ビタミンD中毒
・骨腫瘍
・骨髄炎
○基準値以下で疑われる疾患 低カルシウム血症 → ・泌乳によるもの
・第四胃運動減退している可能性がある。 (Ping音の確認)
・心機能低下
・腎前性腎不全
・腎毒性薬物(サルファ剤・アミノグリコシド系)
・腎性続発性上皮小体機能亢進症 →慢性腎不全に続発 (低CA・高P)
・原発性上皮小体機能低下症
・産褥性テタニー(乳熱)(低リン血症も伴う) →乳熱悪化で、ダウナー症候群へ ・低アルブミン血症
・急性膵炎
|
参考に使ってください。
なお、間違っている部分もあると思います。
学生の文章と思い、温かい目で見守ってください。